EPISODE

Episode 02 久留米気質と画壇
  対談:丸山 豊 vs 内野 秀美 [since 1980]


内野 秀美
 

美術界の人々

内野 今の五十歳から以下の若い画家連中は、何のかのと言いながらも、やはり青木、坂本、古賀…。これが目標ですよね。そこまで自分の芸術を完成させたい。
丸山 ただね、芸術において、自分がある目標の人物を乗り越した、と思ったときでも、実はまだ乗り越えてはいないんですよね。実際はその掌の上でもがいている。難しいですねぇ。何かを乗り越えるということは。
内野 そうですね。私の明善校の後輩で浦園繁君がいますが、この人は示現会の展覧会、久留米の総合美術展と、久留米の総元締めみたいにしてやっているんですが、これなんかの作品を見ても、昔から白の基調の中の絵、これは坂本先生の影響ですよね。すごく綺麗な絵です。最近は櫨を描いているんだけれど、色の配置など坂本先生を連想させるものがあります。まず、そういうことから乗り越えていかねばいけませんね。  中山茂にしたって、新人会などで坂本先生に教えを受けたと思いますが、独立展で独立賞を三回ももらったりしているんですけれどもね。やはり坂本先生のような感じが、…画面にずーっとあるんですよね。自分ではそれを乗り切ったつもりでしょうがね。
丸山 下川都一朗は主題まで似ていますね。
内野 大分違うとは思っているでしょうが。…同じようなことが久保田済美にもいえます。美術評論家たちが一応注目する四十歳代の画家ですが、これをどう乗り切るか、興味があります。  その他、二科の福岡県支部長をしている古賀耕児。この人は故・伊東静尾さんの長男ですが、なかなか元気に活躍しています。画業の上でも、常に新しい道を切り開く努力をしています。  しかし、一様に言えることは、筑後色とでもいう情緒性に富んだベールが一枚あるということでしょう。今、筑後の画家展を石橋美術館で開いていますが、四十歳以上という年令制限をして集めてありますが、なんと八十名。四十歳以下を加えればどれだけの人数になるか、人口比の上からは日本一の絵画人口でしょうね。
丸山 昨年でしたか、彫刻展をやりましたね。
内野 これは絵画のような伝統的なものがないので、今から、といえます。五十歳代で、目下イタリアにいる豊福知徳を頂点として、久留米の毛利陽出春、都留誠一、能登原弘芳。動く彫刻の和田章など現代九州彫刻展、昨年石橋文化センターでやりましたね。それに宇部や神戸の日本彫刻展、また東京での個展などで活躍しています。馬場全作は国画会でと、それぞれユニークな制作態度が面白く、活気が出てきたところです。  九州でも、彫刻といえば久留米、と言われるようになりましたよ。
 
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  *Illustration ; UCHINO HIDEMI  Author : Sakamoto Toyonobu