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古賀 春江 |
丸山 |
古賀春江の場合、久留米でも、“春江忌”位やらねばいけないですね。坂本先生と青木先生という大先輩がおられるものだから、春江の偉さが充分に認められていない。あの二人の先輩がいなければ、古賀春江をもっと大事に扱うだろうけれども…。誰か若い人が思い立って春江忌をやって、古賀春江の存在の意味を大切にしてもいいと思いますね。 |
内野 |
そういう意味の春江忌は勿論、坂本先生を讃えるとか、それに…青木繁のけしけし祭りも同じですけれども、そうしたことに力を尽くすことを今の若い絵描きには求められないと思うんですがね。…若い連中は…、言っていいのかどうか判らないんだけれども、考える余裕がないんですよね。それに、絵画というものに対する考え方の大きな転換や飛躍があるような気がします。
で、けしけし祭りにもあまり集まらないし、坂本先生の何だというときにも来ないし、…古賀春江についても若い絵描きにそれを求めても駄目だと思いますね。これはどういうことになるんだろうか、と思うんですけれどもね。若い連中がもう少し歳をとって、経済的にも芸術的にも安心するような時代になりますとね…。 |
丸山 |
芸術というのは、師の後について行くということではなく、乗り越えて行こうとするのが芸術だから、その意味で、年長者の先輩への尊敬を若い人に望むのは無理だろうけれども、いずれ、その本当の大きさ、偉大さというものを納得する年令がくるのではないかと思いますね。 |
内野 |
それまで待たねばしょうがないですね。 |
丸山 |
例えば、太宰治の忌は若い人が集まるが、柳川の白秋祭などは、今の『九州文学』同人の熱心な年寄りの連中がいるからやっていけるのであって…。
しかし、郷土に自分が乗り越えていくべき大きな先輩がいるということは頼もしく、嬉しいことですね。もしそういう目標がない場合を考えてみると、これほど淋しいことはないですね。郷土の芸術先輩から受ける恩恵は大したものですよ。かねては格別に感じていないだけですね。 |
内野 |
うん。そうですね。大したものですよ。 |
丸山 |
これは坂本先生、青木先生に限らず、松田諦晶さんもそうです。松田さんの恩恵というものは大したものですよ。 |
内野 |
大したものです。 |
丸山 |
己を殺して後輩を育てることに生涯を賭けられましたね。 |
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*Illustration ; AOKI SHIGERU Author : Sakamoto Toyonobu
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