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連なり その先に
January 2025
西日本新聞社久留米総局長 入江 剛史
西日本新聞社久留米総局長 入江 剛史

「久留米連合文化会」と聞いて、分かったようなふうで名刺を受け取った。昨年夏に西日本新聞久留米総局に赴任してまもなく、連文の方から御挨拶を頂いた。どこかしこにあるような文化団体の連携組織という認識で。
連文は違った。その前身は、昭和21年に発足した久留米文化の会。発起人の一人、俳人の丸山豊氏は、ビルマとタイの国境線で日本の敗戦を聞いたという。
「生を得て母国へかえりついたら、母国の文化の回復に余生を投じよう。未熟とはいえ戦争という苛酷なときをくぐってきた批評精神を胸にすえて、心ある友人たちとふるさとの文化運動をはじめよう」(緑の追想⑩)
文化の会は発展的な解散を遂げ、昭和24年、連合文化会が創立。75年が過ぎて、会員は460人余り。文芸、美術、舞台芸術など5部門23部に分かれるものの、団体のつながりではない。個の連なり。異分野の者たちが刺激し合い、久留米の文化を高める理想を掲げてきた。
こうした文化運動の先に今がある。私自身といえば、そんな根が張った久留米に赴任し、心苦しかった。芸術コンクールで審査や挨拶の機会を頂くけれども「私、素人なのですが…」と思う。
ある作家に展示会場で、どこに視線を向けるのか聞いた。自らの作品の前で人が立ち止まるかどうか。己の主張を作品に埋め込み、それが届けば人は足を止めるという。確かに「素人」の私も、一つ一つの展示物を同じ時間で眺めない。何かを感じれば足が止まる。「玄人」か「素人」より、何かを感じ取ろうとするか否か。そう思うと、私自身と文化との壁が少し低くなり、心も軽くなった。
「心ある友人たち」を包み込み、久留米の文化を紡いできた連文。これからも新たな連なりを生み出すに違いない。
広報委員会